告ハラに似たもの

告ハラって言葉がちょっと前に出てきて、それは「関係性ができていない人に相手のことも考えずに自分の気持ちをぶつける人。それに対して迷惑を被る人」みたいなことをいうらしく、そのことについて賛否両論があったりするらしい。
なんでもハラスメントとつける風習はどうかと思うし、好きじゃない人から告白されて困るなんてことは昔からあることなので告ハラに関しては賛否どちらでもよいと思っていたのだが、私も告ハラに似た体験をしたので書いておく。

結論から言うと、空気を読んで行動してほしいし、何回か断られたら告白するのはやめるべきだと思う。

昨年末に男性からカラオケに行こうと誘われた。
男性はスポーツジムで一緒になる人で半年程前に男性から声をかけられ、週に1度、5分程度世間話をする間柄になった。
そんな友達でもない知り合い程度の人から「2人でカラオケに」なんて誘われた時点でびっくりだし、彼は私が結婚していて子どももいることを知っているのにどういうつもりで誘っているのだろう、と警戒してしまった。
ちなみに誘ってきた男性というのは、独身で年齢は30代半ばくらい。中肉中背の顔面は中の下といったところで、どちらかといえば冴えない方だと思う。
私は当時、平日の昼間にジムへ行っていて彼も昼間に来ており夜に働いていると言っていた。
夜の仕事といってもホストみたいな感じではなく、見た感じでは警備の仕事かなにかをしているのではないかと思っている。
控えめに言ってお金もなさそうだし、話していても頭の回転が早いとか会話のセンスがあるとも思わないし、ダンスのレッスンで一緒になるけれどなんでこんなにできないのに参加しているの?と思うほど下手くそだ。
要は彼に対して私は魅力を全く感じていないのだ。

カラオケに誘われた時点で私の頭には迷いなく「断る」という選択肢しか浮かばなかった。
これが好意的に思う人なら話は別だったかもしれない。
「カラオケは苦手なので他のことならお付き合いしますよ」くらいは言ったかもしれない。
しかし私は彼を微塵もよいと思っていない。
私は「ちょっと年末でバタバタして忙しくて」なんてことをヘラヘラしながら言って断った。
断るって書いたけど、断るのだって気を使う。
気を使わないでいいのなら「えー、カラオケとか嫌いだしー、そもそもお前とジムの外で会うのムリ」くらい言いたいテンションだ。
そんな感じで断ったのだけど、その後も年末の営業日までに2回誘われてそのたびに私はヘラヘラしながら「あー大掃除せなあかんからー」とか「息子が期末テストで家帰ってくるの早いねん」なんて言って断った。
断るって書いたけど、ただ断ったのではなく、私の断り方が悪くて誘ってきたのかな、などといろいろ考えた。
彼は独身だし、ましてや子どももいないのだから、主婦である私が本当に忙しいと思っているのかもしれない。
本当に忙しいという理由だけで断っていると思っているのかもしれない。
さすがにタイプじゃないから断っているとは言えないが、カラオケが好きじゃないことくらい言ってあげるのが親切なのかもしれない等と悩んだ。
結局、断っているのに合計3回も誘われてなんだか疲れたし、断り方が悪かったのかと気をもむのもムダだし、また誘われて断るの面倒くさいな、と思った私は彼と疎遠にしていこうと考えた。
しかし急に邪険に扱うわけにもいかない。
同じジムに通っているから、顔を合わせれば笑顔で挨拶くらいするし、話しかけられたら無視するわけにもいかない。
こちらとしても、忘年会のカラオケの話題を年明けまで引っ張ることはなかろうと油断をしていたこともある。

そんなこんなで年が明けてしばらく経った頃、たぶん1か月とかそれくらいに、今度は「鉄板焼きのお店に行きませんか?」と誘われた。
何でも同じジムの人が開業したらしく、夜にしかやっていないから夜に出かけようと言う。

ここでもやはり私は「なんでやねん?」と思う。

友達でもないのに、主婦なのに、なんで男の人と2人で鉄板焼きを食べにいかなあかんねん?

お金のなさそうな彼のことだ。当然割り勘ということになるだろう。
もちろん私は速攻で「子どもがいるから夜は出かけられない」と断った。
断ってから、前回のカラオケのこともあるし、また誘ってくるかもしれないと思った。
もう二度と誘ってこないような適切な断り方はないかと思案した。
私は「夜は出かけられない」と言ったから、次はランチに誘われるかもしれないし、鉄板焼きが嫌いだと言ったらイタリアンに誘われるかもしれない。
そもそも鉄板焼きでもイタリアンでも寿司でも、昼でも夜でも彼とはどこにも行きたくないのだ。
だけど、そんなことをスマートに伝える言葉を私は知らない。
彼からはその後1回、鉄板焼への誘いがあり、私はいつも通りヘラヘラしながら断って疎遠にした。

私がパートをすることになり、彼と会う時間にジムへ行けなくなったのだ。
その後もジムで会うことはあるが、目を合わせないようにしたり、話しかけられる前に他の人と話したり、話しかけられても忙しいフリをして必要最低限しか返事をしないようにしている。
彼は別に悪いことをしたわけではないし、悪気があったわけでもないし、ましてや私に恋愛感情を持っていたのかもわからない。
ただ、私は彼とジムの外以外で会う気はなく、友達になる気もなく、断ることに疲れてしまっただけだ。
でも疲れるのって断るときだけじゃないのだ。
断ってからも定期的に顔を合わせるわけだから、何事もなかったかのようなテンションで話をしなければいけない。
また誘われるんじゃないか、誘われたらどうやって断るのが効果的か、この人はどういうつもりで誘ってくるのか、そういうことを考えながら接するのはしんどい。
好きな人に対してだったらいいけど、どうでもいい人に気を使うのが思っている以上にしんどい。

ただ断るだけだったり、その後よそよそしくなるようなら空気を読んであきらめるべきだ。
私なら、誘われて嬉しかったら「嬉しい」と意思表示する。
どうしても行けないなら「忙しい」ではない理由を言うし「いつなら空いてる」「◯◯なら行きたい」など、次につながることを言う。
誘うなとか告白するなとかではなく、明らかに脈がなさそうな場合は早めに諦めてあげるべきだ。
断るほうだって相当な労力を使うのだから。